東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)277号 判決
一 請求の原因一ないし四は当事者間に争いがない。
二 右の事実によれば、本件考案の実用新案登録請求の範囲は、請求の原因二記載の内容から同三記載の内容のとおり減縮訂正された。しかるに、審決は同二記載の訂正前の実用新案登録請求の範囲に基づいて本件考案の要旨を認定し、これを前提として、本件登録が無効であると判断した。即ち、訂正前の実用新案登録請求の範囲が、本件考案のテンシヨンブライドルロールにおいて、「表面硬度を八〇度~九〇度(JIS K六三〇一)を有する如く」圧縮成形されてなるとして、その物理的構成を表面硬度のみで特定していたため、審決は、右テンシヨンブライドルロールが第二引用例のテンシヨンロールと実質上同一と判断し、それを前提として本件考案の進歩性を否定した。しかし、訂正後の実用新案登録請求の範囲は右の点を「表面硬度八〇度~九〇度(JIS K六三〇一)及び摩擦係数〇・一八五以上を有する如く」として、表面硬度のみならず摩擦係数によつても特定する構成に訂正されたから、本件考案は出願当初から右のとおり訂正されたものとみなされることとなり(実用新案法四一条、特許法一二八条)、審決は結果的に本件考案の要旨認定を誤つて(右に反するが如き被告の主張は理由がない。)、前記のとおり第二引用例のものと対比判断した違法があるというべきであつて、この違法は審決の結論に影響を及ぼすものである。
被告は訂正後の本件考案が独立して実用新案登録を受けることができるものではないとして訂正無効の主張をするが、訂正が無効であるというためには訂正を無効とする審決の確定が必要であり、かかる確定審決が未だ存しない以上、右主張はそれ自体失当である。
三 よつて、原告らの本訴請求は正当として認容する。
〔編註〕 本件における実用新案登録請求の範囲は左のとおりである。
二 訂正審決前の本件実用新案登録請求の範囲
金属ストリツプのテンシヨンレベリング工程において圧延、形状矯正を行うためにスキンパスミル及びレベリングミルの入側、中側、出側に配設されるテンシヨンブライドルロールであり、同ロールは繊維断面が表面に現われる如く、円板状に形成された不織布エレメントの多数を、その中心穴をロール軸に挿通しロール軸の両側から締め付けて表面硬度八〇度~九五度(JIS K六三〇一)を有する如く圧縮成形されてなることを特徴とする金属ストリツプのテンシヨンレベリング工程に設ける不織布よりなるテンシヨンブライドルロール
三 訂正審決後の本件実用新案登録請求の範囲
金属ストリツプのテンシヨンレベリング工程において圧延、形状矯正を行うためにスキンパスミル及びレベリングミルの入側、中側、出側に配設されるテンシヨンブライドルロールであり、同ロールは繊維断面が表面に現われる如く、円板状に形成された不織布エレメントの多数を、その中心穴をロール軸に挿通しロール軸の両側から締め付けて表面硬度八〇度~九五度(JIS K六三〇一)及び摩擦係数〇・一八五以上を有する如く圧縮成形されてなることを特徴とする金属ストリツプのテンシヨンレベリング工程に設ける不織布よりなるテンシヨンブライドルロール